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フジクリーン工業株式会社<GNT100(グローバルニッチトップ100)インタビュー>

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フジクリーン工業株式会社様は、国内でトップシェアを誇る浄化槽メーカーのパイオニアです。研究・開発から製造・設計・販売・施工・メンテナンスまでを一貫して行うところに特徴があります。子供たちが水まみれ泥まみれになって遊べる水辺を取り戻すという信念を持ち、事業に取り組まれています。

今回は、

海外事業部 部長 
田畑 洋輔 様

執行役員 総務部 部長 
内田 守彦 様

に取材をさせていただきました。

 

事業の中核-浄化槽について

――浄化槽とは

水をきれいにする装置です。どういう水を処理するかというと、主に家庭から流れてくる生活系の排水をきれいにして、公共用水域(海や川など)に流す、水処理の装置です。

――フジクリーン工業株式会社の浄化槽の優れた点

日本で設置する浄化槽は、性能やや施工方法が定められていて、国の認証を受けたものでなければならないため、浄化槽に対して他社と差をつけるのはなかなか難しいと思います。しかし、その中でも、装置のコンパクトさや有機物だけではなく窒素・リンを取り除くことによって、水が停滞する閉鎖性水域の富栄養化の問題を解決するような、より高度な処理装置を先駆けて開発したという点では開発能力は高いのではないかと思います。

――浄化槽が下水に比べて優れている点

トイレの水だけを処理する単独浄化槽の新設が禁止となり、合併浄化槽になってからは、国や地方自治体が「補助金を出してでも浄化槽を整備したい。」というふうに潮目が変わりました。現在は、下水道と浄化槽は同等の処理性能を発揮するという位置づけにあって、棲み分けをしながら整備されています。
下水道の場合は、都市部であれば家と家との距離が短く投資効果が高いです。しかし、残された汚水処理の未整備のエリアというのは郊外が多く、郊外になりますと家と家との距離が長く投資効果が低くなります。
それに対して、浄化槽は敷地内に設置するため下水管が不要となり下水道に比べて安く、早く整備することができます。

――処理を支える高度処理技術とは

弊社の持つ高度処理技術は、特に窒素・リンの除去技術になると思います。弊社では2002年に窒素・リン除去型浄化槽を日本で初めて発売しました。その後、今でも弊社含めて2社しか商品化できていない技術です。特に、リンを除去する技術は、下水処理場の場合には凝集剤を添加する技術になっていますが、メンテナンスや設置した後のトラブルを考慮すると、分散型システムである浄化槽に適用するのが難しいと言われていました。そういった中で、鉄電解法を採用して、それを浄化槽に組み込んで商品化しました。これは発売してから年数が経っていますが、差別化ができている技術の1つだと思っています。
また、アメリカやオーストラリアでも「窒素やリンを除去して欲しい」と言うニーズがあります。安定的に窒素除去できる高度処理の技術が今評価されているところです。さらに、リン除去のニーズもあるということが分かってきていますので、弊社が国内で培ってきた技術が海外の水環境保全に貢献できるのではないかと考えています。

浄水槽分野トップに君臨する経営戦略について

――高い技術力を有する要因とは

2000年に浄化槽法が改正されたことが大きな転機でした。それまでは、各社が一定の基準に沿って浄化槽の設計を行ってきました。改正によって、必要な性能を達成していれば、どのような構造でも認証が取れるということになりました。この2000年の浄化槽法の改正に先駆けて、弊社では1998年に水環境研究所をつくりました。つまり、より研究開発に注力できるような環境を整えて取り組んできたと言うことです。今でも40人以上の研究開発に携わっているメンバーがおり、研究開発に力を注いでいることが、他社と差別化できる技術を生んできた要因と思います。

――浄化槽に着目した経緯は?

まず弊社の設立の経緯からお話ししますと、セメントを扱う親会社から「セメントの需要を取り込んで新しい商売ができないか」との話から、弊社の前身である富士コンクリート工業という会社が設立されました。そこから、セメントの需要拡大を図るため、コンクリートを使った浄化槽の販売を開始したことがスタートです。当時は国が決めた構造に基づいて浄化槽を作れば良かったので、メーカーとして販売力を磨きながらシェアを広げていました。どちらかと言えば製造と販売が中核の事業でした。そこから、国の例示した規格だけではなくメーカー独自の開発力が生きるようなものづくりが行われるようになり、躯体もコンクリートからFRP(繊維強化プラスチック)に変わりました。さらに、売り上げ規模を伸ばすために、関連する事業として施工・メンテナンスを行い事業の幅を広げていきました。施工やメンテナンスの現場において様々な情報をいただく中で、製品を磨くことにより会社を発展させていきました。
浄化槽は、施工やメンテナンスの仕方を十分お客様がわかった上で使っていただかないときれいな水が出ません。従いまして、事業としては施工・メンテナンスはそれほど大きくないのですが、アフターフォローにも重きを置いて、私たちの製品を扱っていただく人々に喜んでもらえることを意識したものづくりをするようになりました。

――海外でのフォローアップ体制について

海外でも基本的な考え方は同じです。販売だけに特化することも当然できますが、例えばアジアにおいては販売だけをしてその後のフォローをしないと、どういった使われ方をしているかが分からず、持続的に使用されていないという場合が多く見られます。施工やメンテナンスに注力して、しっかりとフォローできるよう体制を作っておくことは、販売を持続的にし、現地に貢献していくという意味ですごく大事なことだと考えています。海外の体制については、アフターサービスを協力して実施していただけるような代理店と協力して活動しています。

――国内トップシェア獲得と海外進出のポイントとは

国内において、最初の頃は「決まったものを作り売る」というフェーズから、「企業独自の製品を開発する」というフェーズに移行する中で、当初の製品に比べてよりコンパクトになりました。
複雑な構造になると、扱う方にとっては難しいと感じられる場合もあります。お客様に正しく使っていただくためにも、出来る限り丁寧な説明をするように心がけてきました。その中で、市場からの声も多くいただくようになりました。それをもとにまた改善し、よりよい商品を生み出すという良い循環、つまりプロダクトアウトからマーケットインの考えで商品を作るというところが非常に大きかったと思っております。
事業が大きくなっていく過程で、中長期の経営計画を立ててその計画を実現するために日々努力する形で、かれこれ12,3年やっております。「長期的にこのような事業をやっていきたいね、こういう風な形で成長したいね。」というビジョンを描いて、開発、生産、営業部門、それと全体を管理する管理部門のそれぞれが高い目標に向けて努力するというシステムを作り込み、それが文化のような形になって、会社が目指す方向をひとりひとりが実現しようと頑張っているということが大きいのかなと思います。事業的なものだけでなく、マネジメント的なところでもかなり進歩したのではないかと思います。

――海外企業と比較してみて

世界の分散型の排水処理の市場において日本の技術と海外の技術とを比べると、日本の技術の方がかなり進んでいます。海外で一般的に使用されているのは、まだ沈殿分離だけを行うようなセプティックタンクです。海外製品の中にも高性能な製品もありますが、下水処理場の処理方式を小さくしただけの技術が多く普及しています。そういった技術を使った製品は、かなり安価になっています。しかし、環境面を考えますとやはり日本で培ってきた技術を活かした商品が望まれるのではないかと思います。やはり、価格面で現地の商品に負けてしまうことはどこの国でも起こっています。したがって現地の安価で処理性能が低いシステムから環境改善に結びつくような高性能なシステムに置き換えていく取り組みが必要になってくると思っています。

――今後のグローバル展開について

東南アジアの場合、非常に厳格な排水基準が整備されていたりしますが、実際の運用面を見ますとそれらが守られていない国があります。また、先進国と違うところは、なかなか施主自身がお金を出せないという状況です。ゆえに、施主に直接販売すると言うよりは公共事業として進めていくというような考え方も必要になると考えています。
したがって、東南アジアに関しては下水道の一部として浄化槽を使ってもらえるような形で、すなわち公共事業として整備が進められ、それによって持続的に使ってもらえるような提案をして行きたいと考えています。また、東南アジアにおいても先進国を参考にした水質基準が定められていますので、そういった水質基準を満たすことができることを示していくことも必要と考えています。

――オーストラリアへの進出について

同じ分散型処理システムでも、日本と現地のオーストラリアとでは考え方に違うところがありました。具体的には、日本では浄化槽の処理水はそのまま側溝や川に放流されていますが、現地の場合は敷地内で土壌に浸透するといった方法が採られています。また、現地は非常に大きな浄化槽が普及していますが、我々の浄化槽は駐車場の下にも施工できるような、非常にコンパクトな商品になっています。
大きな製品に慣れている現地の人にこの小さな商品でなぜ適正な処理ができるのかということを理解してもらうのに苦労しました。地道な営業活動の結果、最終的には実際に使用してもらったお客様からのトラブルが少ないという口コミにより、不安を持たれていたお客様にも使っていただけるようになりました。

――60年以上に渡り会社を継続できた秘訣とは

最初は貪欲に営業を中心に引っ張っていきながら成長し、今は中長期のビジョンをしっかり描いて、各部署が連携しながらそれをしっかりとやり切っていくように頑張っています。長期の課題を設定する際には、会社の若手も含めて様々な部署から集まって9年間のシナリオを作っています。

社会問題に対する視座について

参照:フジクリーン工業株式会社HP(https://www.fujiclean.co.jp/company/philosophy/)

――下水処理インフラの老朽化について

浄化槽は全国に約700万基埋まっていますが、比較的新しい合併処理浄化槽は材質がFRP(繊維強化プラスチック)で出来ていると言うこともあり、耐用年数には問題ないといわれています。ただし、トイレだけの水を処理する単独浄化槽や、エネルギーをたくさん使うような浄化槽があります。今後、それらを置き換えていく取り組みを推進していきたいと考えています。

――コンテンツの制作について

弊社では、子供たちが水まみれ、泥まみれになって遊べるような水辺を回復することを使命として理念に掲げています。コンテンツの制作においても、浄化槽を使っていただく方に水環境への意識を高めていただきたいという想いで作っています。そのために広報誌「水の話」を定期的に発行したり、関連団体の方たちと協力しながら小学校や中学校で環境教育を行ったりしています。また、YouTubeでは、お客様にメンテナンスをしっかりやっていただくための情報を発信しています。現場などでスマホで動画を確認しながら、メンテナンスのお役に立てればということで発信しています。

――SDGs経営について

SDGsでいうと、特に「6.安全な水とトイレを世界中に」との関りが深いと考えています。トイレを整備すると、その後の排水処理が必要になりますが、排水処理というのは、お金がかかるため、途上国にとっては優先順位がすごく低い所にあります。そういった中では、現地の人々の環境意識を高める必要があり、時間がかかるところでありますが、日本で培った技術力で世界の水環境保全に貢献できるように取り組んでいきたいと考えています。

最後に

――GNT企業に認定されたことによるメリット

ありがたいことに、取材をいただく機会を得たり、内閣府を通じて動画を発信させていただいたりとか、ものすごく追い風をいただいたと思います。加えて、採用面でも、GNT企業について調べた学生に興味を持ってもらえる機会が増えました。

――経済産業省に期待すること

海外の市場開拓がこれからの課題でもあります。オーストラリア・アメリカ・ドイツに続く新たなエリアとして東南アジア等を考えていますので、国主導でスキームを作っていただいて参画しやすいような形になるとありがたいと思っております。


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