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福井県鯖江市で作られている黒い宝石<GIインタビュー>

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福井県鯖江市では「黒い宝石」と呼ばれる丸ナス、“吉川ナス”が作られています。この吉川ナスは、1000年以上の長い歴史を持っていますが、かつては栽培農家が1軒にまで衰退してしまいました。しかし、そこから有志が集って再び吉川ナスの栽培規模を拡大し、平成28年には農林水産省が地域に根差した国の財産であることを示すGI登録を受けています(登録番号 第14号)。

今回は、この吉川ナスの魅力や復興などについて、吉川ナスに携わっていらっしゃる方々に取材しました。

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ご協力頂きましたのは、以下の皆様です。

鯖江市伝統野菜等栽培研究会 会長 

福岡 重光 様

鯖江市役所 農林政策課 

砂畑 達也 様

公益財団法人 農業公社グリーンさばえ 地域マネージャー

笠島 保 様

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黒い宝石「吉川ナス」

吉川ナスの歴史

福岡 様

「昔は、世の中にあるナスはみんな丸ナスでした。戦後になり千両ナスが開発されてから、千両ナスの方が生産性が良いため、こちらが主流になりました。福井県は元々、織物や眼鏡の産業が盛んで、料亭とかも繁盛していました。そういったところでは、吉川ナスのような大きなナスだとかっこよく魅せられるということで、売れていました。」

吉川ナスにしかない魅力や特徴

福岡 様

「吉川ナスは、大きく実ります。大きいものは500g近くにまでして収穫することができます。皮は頑丈にできていますが、加熱・加工しますと非常に柔らくなります。吉川ナスは非常に大きいので、料亭などでは芸術的に加工して素晴らしい料理に魅せることができます。」

品質の統一化について

福岡 様

「年初めから研修会を開いています。そこで、皆さんが同じ品質のナスを継続的に生産出来るように苗づくり、定植、堆肥の作り方などを定期的に研修しています。」

吉川ナスのおいしい食べ方

福岡 様

「輪切りにして加熱し、田楽にして食べると非常においしいです。小さい時期に収穫すれば、浅漬けなど漬け物にすることもできます。千両ナスとはまた違った食感があって、おいしいです。」

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筆者も福岡様の吉川ナスおすすめの食べ方を、実際にやってみました。

まず、吉川ナスそのものの素材のおいしさに驚きました。濃厚な味がありながら瑞々しさもあるので、食べ応えがあり非常においしいです。そして、田楽で頂いてみると、濃厚なナスの味がするので、田楽の味噌の味に負けておらず、相乗効果で旨味が増していました。

また、とても瑞々しいので、田楽味噌が口の中でモッタリとせず、とても食べやすかったです。

笠島 様 「吉川ナスを1センチ大で輪切りにして、オリーブオイルでベーコンと一緒に炒めます。焼けた吉川ナスの上に、コーンと、一緒に焼いたベーコンと、とろけるチーズ、トマトを重ねて一回蒸します。すると、ピザ風のナス料理が出来ます。お子様には非常に人気の料理です。」

こちらも実際に作ってみました。

トマトと吉川ナスの瑞々しさ、ベーコンのジューシーさ、コーンのシャキシャキさ、素材の良さが全て出ていました。そして、チーズもひとつのアクセントとなっています。素材の良さを全面に引き出すことで、完成された味になっています。調味料を一切使っていないので、お子様のおやつにもぴったりですし、食べ応えがあるのでお酒のおつまみとしてもおいしく頂くことができます。

栽培農家1軒からの復興。「ゼロスタートからGI登録へ」

復興のきっかけ

福岡 様

「前会長さんが、最後の生産者の奥さんから『種は残ってるんだけど』と言われました。鯖江市の行政の方も農協の方も『何とかした方が良い。』、『吉川ナスは特徴のあるものだから、鯖江市の特産物としてこれからの行政に活用できるのではないか。』と考え、生産組合と一体となって人選して10人くらい集めて、『生産を継続しようじゃないか。』という話になりました。それ以来、最初は何も分かりませんでしたが、前会長はベテランの農業者で、昔からのことを知っておられたので、お話を聞きながら、県や行政に協力いただいて継続しようということになりました。」

未経験からのスタート

福岡 様

「私はナスを作った経験はなかったのですが、先輩に『ナスはこうやって作るんや。』といったことを教えてもらい、さらに、各地でナスを作っているところに研修に行かせてもらい『こんな風にせなあかんのや。』という勉強をさせてもらいました。特別なことはありませんが、基本からということで、土づくりや肥料づくりとか、そういったことからやってきました。」

生産の引き継ぎからGI登録までを振り返って

福岡 様 「生産を引き継いでからGIを取得するまでの7年の間、行政、県、市、農協、様々な方々から支援を頂いて色々やってきましたが、売れ行きがもうひとつでした。これを何とかしないといけないと思っていました。そこで、事務局も行政も『何かいい方法はないか。』という事で、GI登録を受ければ知名度が格段に上がるのではないか、と推測をされました。そして、事務局が力をいれまして、申請をして登録されました。行政には非常に感謝しておりますし、登録されたことによって、テレビやラジオ、新聞からの宣伝も、なお一層されるようになりました。今では、年間3万個近く売れるようになってきました。」

農業とテクノロジー

トレーサビリティについて

砂畑 様

「吉川ナスはGI登録をされているため、GIシールが貼ってある吉川ナスは鯖江市からしか出荷されておりません。なので、偽物の吉川ナスは無いと思います。しかし、吉川ナスがどういうお店や販路先でお取り扱い頂いていて、できれば、どれくらいの価格で、いくつぐらいの年齢の方が購入されているか、という購買履歴が分かると、マーケティング戦略が考えやすいという思いがあります。」

笠島 様

「本当のことを言いますと、農家さん一人一人が、個別に名前を付けてマーケットに売って出て、個人名で『Aさんはこのナスでこの価格だ。』という風になってくると、ランクの高いマーケットに行って、いい品物を出したら値段として返ってくるということが分かれば、農家さんにとっても励みになると思います。ただ、それをしようと思ったらすごく費用が掛かりますし、人も時間も必要になります。本当のことを言えば、あった方がいいと思います。」

今後、テクノロジーに望むこと

笠島 様

「今は、人の目視や触感など、五感を使って検査を行っています。こうしたことが自動検査できるようになったら一番いいですね。」

今後の展望について

笠島 様 「事務局の立場から言いますと、今、伝統野菜等栽培研究会の会員が17名おります。今年は、2名ほど休会している状態で、14、5名の方が活動しています。その中で、主流となっておられる方の年齢が、上が88歳で下が45歳くらいです。平均年齢でいうと、もう70歳を超えています。こうした状況の中で、いかにこの吉川ナスを若い人に伝承していくか、というのが一つの大きな課題だと思います。」

砂畑 様 「首都圏では1個350円から450円といったような高い値段でお取り扱い頂いていて、沢山購入して頂いております。この高い価格のままでブランドが高まって、今後も展開していきたいという思いがある中で、まだまだお取り扱い頂けるお店が広がる余地があります。首都圏、中京圏、関西圏にどんどん広まってほしいという思いがあります。」

福岡 様

「もっと多く生産することができれば、もっと販売することが出来るのではないかと思います。持ちつ持たれつで、沢山売れるようになれば、新しい生産者も増えてくれるのではないかと思います。なので、この両面に力を入れて、これで生活できるぐらいの人がでてきたらいいなと思っています。」

「また、若い方に吉川ナスを引き継いで頂いて、『吉川ナスを残しておいてよかった。』と言ってもらえるように、吉川ナスを維持していきたいです。今後は若い方に生産者になって頂いて、もっと生産量が増えるといいなと思っています。」

猛暑にも負けない熱い想い

今回、吉川ナスに深く携わっている方々に取材致しました。取材内容にもある通り、「吉川ナスをもっと広めよう」、「吉川ナスを引き継いでいこう」という熱い想いを感じました。吉川ナスに携わった皆様にこのような熱い想いがあるからこそ、吉川ナスは栽培農家が1軒にまで衰退したところからGI登録を受けるブランド品にまで成長したのではないでしょうか。まさに「黒い宝石」吉川ナスは、携わる人々の熱い想いの結晶といえるでしょう。

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