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なぜ今の市田柿の姿があるのか <GIインタビュー>

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今回は、みなみ信州農業協同組合の代表理事組合長である寺沢 寿男 様に取材させて頂きました。

市田柿は、恵まれた環境のもとで栽培された栄養価豊富なスーパーフードです。しかし、市田柿が現在のようにGI登録を受けて有名ブランドとなった理由は、恵まれた環境だけが理由ではありませんでした。

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市田柿について

生産環境と歴史

長野県飯田市周辺の地域は、非常に市田柿を生産するのに最適の自然条件です。そして、市田柿を作っておられる方は約3000戸あります。多くの方が栽培をされていることと、中山間地域で非常に標高差があることがポイントです。そして尚且つ、天竜川が流れているので、川から出る霧が非常に干し柿生産には最適な条件です。

市田柿は600年以上前から栽培されていますが、大正10年から「市田柿」という名称で出荷されて販売されてきまして、今年で丁度100年目になりますので、非常に歴史のあるものです。そして、全国で色々なところで干し柿が作られていますが、その中で、市田柿は全国の干し柿の大体38%くらいの生産量になると思います。

市田柿の特徴

市田柿は、干し柿の状態で大体25グラムくらいの重さです。干し柿にする前の状態で、大体100グラムから125グラムくらいです。どちらかというと、他の県の干し柿と比べると小ぶりの方です。糖度は、干し柿にする前は20%くらいありまして、干し柿にした状態ですと65%から70%くらいあります。
そして、市田柿は表面が非常に白くなっておりますが、これは粉を付けたりしているわけではなく、果実内部にある糖分(ブドウ糖)が染み出て結晶となり白くなっています。まさに、自然の状態です。

自然の甘みが感じられる市田柿<GI実食>

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実際に私も市田柿を頂いてみました。

自然な甘みであり、非常に食べやすく美味しかったです。また、柿の風味も感じられました。

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市田柿にバターとクリームチーズを挟んでみました。

バターの塩気と市田柿の甘みが非常にマッチしていました。とてもクリーミーでおやつやワインなどのお酒のお供にぴったりです。

クリームチーズは、バターよりも塩味が濃く、塩スイーツのような味わいで非常においしかったです。

市田柿工房

私たち農協で、市田柿工房という工場を持っております。農家の皆さんの中で、高齢化により市田柿を生で剥けなくなってきている方がいらっしゃいます。そこで、生で市田柿を集めて、市田柿工房で市田柿を剥き、干して製品にするといったことをやっています。これは農協の施設として、全体で600トンくらい行っております。また、お客様のご要望に合わせたパッケージングも行っております。

子会社「株式会社市田柿本舗ぷらう」様での取り組み

また、農協の子会社で柿の生産もやっております。そこでは、農家の皆さんが作れなくなった畑を借りて生産するなどを行っています。今私たちがやっている仕事は、この地域の中で市田柿を作って、出来たものを農協の中でも剥いたりして、製品として出すということをやってます。

市田柿を守りたいという想い

一番は、栽培農家の皆さんがしっかり収益を取っていく、出来ないところは農協なりがお手伝いをしながら、地域全体として市田柿という産業を守っていきたいと考えています。

徹底した商品管理

品質統一化への取り組み

 JAには柿部会という生産者組織があり2000名の方が加入しております。部会は、細かく各地区に支部がありまして、そこの中で干し場を全て点検しまして、なおかつ生産工程をチェックリストに基づいてチェックしております。

栽培されている方が、農協の部会員だけでも2000名おられて、生産をしてそれを収穫して加工してということをしますから、皆さんの品質をいかに均一化して同じ商品を作っていくかという事が一番大事なことです。

協力体制と継承の想い

自然の中で作っていくという中で、大変苦労しております。農協と生産者の部会の方々で組織された柿部会で一緒に、選定から始まり収穫まで一つの基準を作り、それに基づいて生産工程を皆が守りながらやってます。皆が協力して市田柿というブランドで地域の経済を作って、地域の経済をこれからもずっと継承していきたいです。

積極的な取り組み

若い世代への普及へ向けて

市田柿は、年代の上の方が食べることが多いというのが今までずっとありまして、若い皆さんに市田柿とか干し柿といってもなかなか食して頂けないことがあります。今でも現実、東京辺りでアンケート取ってみると若い皆さんは「市田柿知らないね。」という方が非常に多いんですね。そういう皆さんに、どのようにしてこれから市田柿を認知して食べて頂くかということを考えて、色々な取り組みを今までやってきました。

女子大生と協力して商品開発

愛知大学の女子学生の皆さんからアイディアを頂いたりして、パッケージの案を頂いたりなどしました。また、私たちが付加価値商品ということで取り組んでいる市田柿のクリームサンドという商品がありまして、これは市田柿がチーズや乳製品に非常によく合うという事で商品開発をしてきました。それもやはり若い世代の皆さん、それから女性も含めて、商品の魅力を広げていきたいという中での取り組みをしています。

さらなる取り組みへ

まだまだ十分ではないなという風に考えております。もっと色々なアイディアを頂いたり自分たちで考えたりして、若い世代の皆さんにもっと食べてもらえるように、アイディアを絞ってやっていきたいなという風に考えております。

GI登録へのきっかけとなった出来事

市田柿は色々な歴史を歩んでまいりました。平成元年に非常に食物繊維が多いということで評価頂いて、ますます市田柿に関心が高くなり評価され、割と高く販売がされるようになってきました。しかし、それに伴って色々な問題も出てまいりました。

分類は「加工食品」へ

平成13年に、食品衛生法(現食品表示法および食品表示基準)により市田柿は加工食品に分類されました。それによって、賞味期限の表示をしなければならないということになりまして、農家の皆さんは今まで市田柿は加工食品だという意識はあまりありませんでした。まずは、「賞味期限が何日あるか」ということをきちんと表示していかないといけないという点がありました。この点が一つ大きく変わったことで、農家の意識改革を含めて大きく方向転換をしました。

偽物の流通

それから、二つ目は、市田柿が有名になってきたことにより、中国から逆に「市田柿もどき」のものが逆に入ってきました。偽物であるにも関わらず「市田柿はこういうものだ」というものが沢山出てきました。

クレームの発生

もうひとつ大きかったのは、平成15年にカビが大発生しました。以前使用していた皮むき機は針に刺して固定、回転させて皮をむくというというものを使っていたのですが、その刺した中の部分がアルコール発酵のような形でカビが発生してしまい、出荷した後で非常に大きなクレームがきました。このことが、市田柿の将来を決めていく上で大変なことになると思いました。
そこで、皮むき機を変えることにしました。柿を吸引して固定するといったものに100%すべて変えまして、それ以降そういったクレームは一切ありません。そういったことを、地区全体、部会員で言うと2000名、全体の生産者で言うと3000名の方が、皆で統一をして市田柿というブランドを守っていこうという取り組みでやってきました。

攻めの姿勢と紡ぎの想いでGI登録

非常に大変な経過を送ってきました。これらのことも含めて、この市田柿というブランドを将来まで、私たちの次の世代まできちんと繋いでいくということと、海外まで含めて攻めていく、そのような想いの中で、このGIを取ってブランドを将来まで継承していきたいということで、GI登録を取らせて頂きました。

GI登録後の変化

認知の変化

まずひとつは、この市田柿というブランドを産地だけでなく、GIマークが入ることによって「このようにきちんと生産から加工までやってるんだよ。」と認知してもらえるというのが非常に大きな効果でした。

海外へ攻める

もうひとつは、海外に輸出をしてる私たちが攻めていくという意味では、非常に攻めていくには攻めやすいです。現在は東南アジア中心ですが、これからもっと攻めていくにも、GI商品というのは大きいと思ってます。今海外でGI申請しているのはタイ、マレーシア、ベトナム、シンガポールで、シンガポールは今年登録を取ることができました。そのような形で、海外の他のところでもこのように申請しながら登録をし、世界的に認知されるようにしていきたいです。

攻める、市田柿<GIインタビューのおわりに>

今回は、みなみ信州農業協同組合の代表理事組合長である寺沢 寿男 様にお話をお伺いしましたが、「攻め」の勢いを非常に感じました。GI登録を受けても止まることなく攻める市田柿は、いずれ日本を代表する産品になるのではないでしょうか。

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