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【インタビュー】「GI制度」活性化のための間口拡大に向けて【農林水産省 × 東大むら塾】

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今回は、地理的表示保護制度(GI制度)という制度について改正によって変わったことを一つのテーマにしながら、GI制度について深く掘り下げていくべく、

農林水産省 輸出・国際局 知的財産課
地理的表示保護推進室長 氷熊 光太郎 様

にインタビューを行いました。

 

地理的表示保護制度(GI制度)とは?

農林水産省では、地理的表示保護制度(GI制度)という制度を活発に推し進めています。
GI制度とは、「その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度」です(参考文献1)。2014年制定、その後、2022年11月に大きな見直しが行われ、より利用しやすい制度が目指されました。
GIマークを使⽤する場合は、GI特産品とセットで⽤いる必要があります。今回の改訂では新たに、
産品広告の宣材写真に加⼯品を⽤いた場合であっても、全体構成としてGI産品について説明されている場合にGIマークを使⽤できるようになりました。

GI制度自体の詳細については、JapanMade.comでは過去のインタビュー記事(参考文献2)でも紹介しておりますので、そちらもご覧ください。

それでは、インタビューの要点をまとめていきます。

GI制度の見直しは、主に3点行われています。

  1. 産品独自の多様な特性を実質的に評価する審査
  2. 登録前後での手続き
  3. GI制度の市場における露出の拡大

 

—見直しの背景はどのようなものでしょうか?

農林水産品や農山漁村地域をどのように活性化していくかを考えるうえで、GI制度の間口を広げていくという話になりました。
同時に、大きな農政の流れとして輸出の振興という動きがあり、従来GI制度が手薄だった、「輸出が主の産品」についてもGI制度を広げていきたいという目的もありました。

—見直し後の利用状況はいかがでしょうか?

見直しが行われたのは2022年11月で、まだ新型コロナの影響が残るころでしたので、農林水産省と地方とのコミュニケーションが不足して十分に広報できていないところもありますが、オンラインを含めて説明を続けております。最近では対面で見直しの趣旨や内容を、直接説明する機会も増えてきました。

2023年は登録数が2022年に比べ増えており、今後、登録を目指す団体も増えています。

 

 

 

—制度見直しで「ストーリーを評価する」とありますが、つまりは基準が厳しくなったということですか?

審査にあたって、ただ単に品質だけでなく、社会的な評判もあわせて評価するということです。
たとえば、見直し前であれば、産品の生産実績が概ね25年は必要だったところ、社会的評判があれば柔軟に運用するようになり、そういう意味では、間口が広がったものと考えています。


—ストーリー的なものを評価するという先には、産地の保護という展望もあるのでしょうか?

GI制度自体はあくまで登録された産品の名称を保護するもので、認証制度とは異なります。

ただ、農林水産物の付加価値向上、ブランド化は重要であると考えており、その一環として、GIに登録された産品の背景にある「ストーリー」を普及していくことも重要だと考えています。

GI制度はどういうときに役に立つのでしょうか?また導入によりメリットはありますか?

GI登録産品の生産にあたり、要件として必要な管理基準等が登録されます。
そして、その基準を満たしていない産品を、GI登録された名称で販売することは侵害と考えます。
そのため、侵害と思しき事案が見つかった場合は、農林水産省が取り締まることができます。
その一環として、侵害したと思われる商品に対して警告を発したり、通販サイトを調査したりということを農林水産省は行っています。

また、GI制度の場合には商標と違って更新にかかる費用がいらないという特徴もあります。
もっとも、商標とGI制度はどちらかとったからどちらかがとれないという性質のものではなく、実際には商標とGI両方取る事例も多いです。

 

 

—GI制度導入を契機とした地域の振興はありえますか?

GI登録をきっかけとして、地域がまとまって販売戦略を検討したり輸出にも力を入れ始めた地域があります。
さらには、ブランド化により地域関係者の所得増にも貢献し、新規就農者への刺激にもなっています。

絶滅の危機に瀕した伝統野菜が、GI制度の導入を機に見直され、結果として、有名百貨店で売れるようになり、生産も復活したという例もあります。

GI、種苗、和牛の精液など、農産品は知的財産の宝庫であり、これをどのように保護・活用するかは重要です。
GIをきっかけに知的財産に目を向け、これを地域振興はもちろんですが、ビジネスにも活用していただきたいと考えています。

 

—現在ではGI制度はどれくらい世界で普及していますか?

現在では、世界100か国ほどでGI制度やそれに類するものが導入されています。

ヨーロッパ圏が中心でしたが、最近では東南アジアや中国も導入しています。

 

 

 

これからの農林水産省の展望は?

GI制度は、登録された名称を独占的に使えるという意味で、非常に強い知的財産。ただ、登録はあくまでスタート地点であり、これをどのように保護・活用していくかという点が非常に重要です。

輸出産品はもちろん、多様な産品のGI登録を進めることで、より前向きにブランド化できるように農林水産省としても手助けていきたいですし、GI制度そのものの普及にも努めていきたいと考えています。

 

*インタビュアー:東京大学教養学部4年 松野大河

このインタビューを行うまで、GI制度自体はなんか聞いたことがあるというくらいものでした。

所属学生団体(東大むら塾:https://todai-murajuku.com/)の活動の中でブランド化する活動を学ばせていただくことはありましたが、国際的な活動も見据えて知的財産を保護するという観点は今まで薄かったので、非常に勉強になりましたし、国際環境にも影響されながらかじ取りを担う農林水産省の取り組みにも強く関心を惹かれました。

この度はインタビューへのご協力ありがとうございました。

 

 

 

<参考文献>


  1. 農林水産省「地理的表示(GI)保護制度」〈2024年1月25日閲覧〉


  2. JapanMade.com「日本の宝を守る、地理的表示保護制度<GIインタビュー>」 〈2024年1月25日閲覧〉


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