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目指せ世界一「檜山海参」<GIインタビュー>

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高級な海の幸と言えば、伊勢海老やカニ、アワビなどが連想されるものかと思います。では、その中に「ナマコ」が名を連ねているというのはご存知でしょうか。最高品質のナマコともなると、1商品当たり10万円を超えます。
日本ではあまりご家庭で口に運ばれることはありませんが、実は中国ではメジャーな食べ物なんです。今回は、「世界一を目指すナマコ」に携わっていらっしゃる、ひやま漁業協同組合の日沼 賢澄 様に取材させていただきました。

檜山海参の魅力

中華料理のシェフに評価されている点

まずは、このイボ立ちですね。北海道のナマコは基本的に6列(イボ足の列)ナマコです。
その中でも檜山のナマコはさらにイボ立ちも良く、イボの数も非常に多いのが特徴です。中国ではイボ立ちが良くてイボの数が多いものほど高品質と言われています。そして、料理にした時にも煮崩れがなく、イボ立ちもピーンと張りつめた状態で仕上がりますから、料理人としては宝石を扱うような感覚になるわけです。さらに、檜山のナマコは肉厚なんです。ナマコに盛り上がりがありまして、料理にしたときもその盛り上がりが非常に良いと評判で、シェフとしては是非扱ってみたい商品となっていると思います。

中華料理のトップシェフ・脇屋 友詞 氏の評価は

2018年に、中華料理のトップシェフである脇屋シェフを招いて産地見学・試食交流会を行いました。脇屋シェフには、まず保管してある生鮮の状態の檜山海参を見ていただきました。それを見ていただいた時には、驚いていました。「こんなにイボ立ちが良くて、生鮮の状態で(水槽に)沢山入っている様子は初めて見た。」と感激していました。生鮮の良い状態をなかなか見ることが出来なかったものですから、生鮮の状態のイボ立ちの良さには驚いていました。
加工場にも見学に来て頂き、その際にも、「ナマコをボイルした煮汁に興味がある。」と仰っていました。その意見を参考に昨年度から煮汁の商品化を目指してます。

塩蔵処理をしたナマコと檜山海参との違い

塩には研磨剤のように作用するものがあります。ですから、塩蔵処理したナマコは檜山海参のように原型を残したような表面にはなりません。表面が皮の剥げたような、黒い状態で仕上がってしまいます。
私たちは砂出しをしっかりして真水のみで仕上げますから、本当にこのまま海に入っていても活きているナマコではないのかと思われるくらい原型を残したまま完成品として仕上がります。そこが大きな特徴です。

地域の特性

砂場というか、泥のようなところで獲られているナマコも多いです。ですが、私たちが捕っている日本海側では、岩礁が多く、その岩礁が縦に何本も走っているところが多いんですね。そして、その間に砂地があります。また日本海は、非常に冬場は海が荒れます。その荒波に耐えるためには生命力が必要だと思います。そういった荒波のところで耐えて育っていった結果が、檜山海参のようなナマコが出来上がる要因なのではないかと私は考えています。

アワビにも見劣りしない逸品

檜山海参は、干しアワビと比べて見劣りしない商品だと思っております。というのは、私たちは大量生産を行っておりません。ロットごとの管理ですと、大きなカゴで管理するわけですけれども、ナマコに関しては1本ごとに管理を行っております。ですから、仕上がりが絶対的に違うとアピールできると思います。食べてみると確かにアワビは美味しいと思います。ですが、中国人は、ナマコを薬膳、漢方という形で捉えて食べており、特に滋養強壮に良い、あとは、妊娠されている方に「元気な子供を産んで下さい」、産後には「体力を回復させてください」ということで、贈答用にあげられています。その時も、とにかくイボ立ちが良くて数が多いものが高品質という歴史が中国にはあるものですから、私はそういったものと比べても見劣りしない商品になっていると思います。

生産をしていく上でのこだわりや取り組み

手取り漁法

手取り漁法とは、まず、潜水をして手取りで1つずつナマコを捕ります。そして、専用のネットにあまり(個数を)詰めないようにして、ある程度の数量が溜まったら浮上し、船の上で回収してもらうという漁法です。
多くの方が海に網を沈めて船で引っ張る「桁曳き(けたひき)」という漁法を使いますが、これをやると当然ナマコの他にも石や貝が入ってしまいますので、どうしても表面が擦れて傷んでしまうんです。ですが、私たちは潜水して、手取りで1つずつ捕りますから、綺麗な状態で港まで持ち帰ることが出来ます。

「丁寧」を心掛けた取扱い

規格として130グラム以上というものがありまして、それ「以下のものは放流しましょう」というふうになっているものですから、見えているものを根こそぎ何でも捕ってしまうというわけではありません。さらに、ナマコは岩場にいるときは岩にくっ付いていたりしますから、あまり強引にはがすと吸盤のところが剥げて傷んでしまいます。ですから、注意しながら、「高級品を扱っているんだ」という気持ちで捕っています。
皆さんに「この1個のナマコが何千円なんですよ、だから大切に獲りましょう」ということを伝えるようにした結果、理解してくださり、皆さんが大切に捕ってくれるようになりました。

先人から遺されたものから受け継ぐ想い

江戸時代から貝柱や干しアワビと同じように、俵物(江戸時代、清への輸出品)として扱われていたと知った時には驚きました。今、凄く古い加工場で実際にやっているんですけれども、自分が生まれたころから使われているような加工場で先輩方がずっとここでこのようにやってやってきたんだなと知った時には感動しました。
工場を見たときに、ナマコを茹でる釜があったんですね。当時、どのくらい茹でていたのかという記録が残っていたのですが、当時の乾燥ナマコの生産は質より量を作るのが主体だったものですから、記録を見ると1日500キロとか1トンとか生産していた記録が残っているわけです。
今の自分たちの環境からすると「よくそれだけのものを生産してたな」と、びっくりしました。そして、使用されていた釜はステンレス製の釜なのですが、これが綺麗な状態で残っていたというのも感動しました。

「目指せ世界一」の原点

昔使っていたものが残っていて、ホワイトボードに昔書いていたものとかがそのまま残っていて、それを見たときに「ここで凄い頑張ってたんだな」と感動しました。今は、当時のような大量生産を目的とした活動ではないのですが、また新たに「目指せ世界一」という目標を掲げて世界一のナマコを作ろうと活動することは、この加工場が無かったら絶対に出来ませんでした。そのような発想も浮かばなかったと思います。ですから、古いボロボロの状態であったとしても、加工場を残しておいてくれたことに、私は非常に感謝しています。
ナマコの価格が10年ぐらいで10倍に高騰したことから、なかなか大量生産ができなくなり、それでも細々と少ないながらも地元の方が生産を続けて中華料理の店に卸していたりですとか、そういう努力が凄いなと思います。それがあるからこそ、「自分もやってみよう」、「引き継ぐ形でもっと素晴らしい乾燥ナマコを作ろう」と、そう思うようにもなりましたし、先輩方のやってきたことというのは立派だとおもいます。

ひやま漁業協同組合様の取り組み

組合の活動

組合の活動としては、まずは密漁監視ですね。夜間のパトロールなどを行い「まずは密漁品を無くしましょう」といった活動をやっています。そして、「檜山海参は漁師の方が捕って加工して営業までやって販売している商品です」といったことを、各地に伺った時には常にお伝えしています。そのおかげで、水産新聞、水産北海道、北海道に関する新聞社各社様がこの事を伝えてくれました。

規格の統一について

ひやま漁業協同組合は、管内8漁協が合併してできた漁協なんです。その中で、ひやま漁業協同組合としてGI登録を申請しているものですから、各所の代表者を集めてGIの勉強会を開いています。勉強会では、「GIというものはどういうものか」、「なぜ自分たちの商品がGI登録できたか」、あとはGIはまだ知らない方が多いですから、聞かれたときにしっかり答えてもらえるようにしています。また、他の支所でも「やりたいときには基準を満たせば行えますよ」という説明もしてあります。

種苗技術

ナマコは外見上オスとメスが分からないものですから、専用のホルモン剤(クビフリン)を打って繫殖させるということを行っております。「卵を出す、精子を取る」という作業はそこまで難しくなかったんです。ですが、受精させた卵を専用の採苗器に付着させてからの生存率や成長率が、最初の1年目はまばらだったんですね、大きいものもあれば米粒のようなものもある。また、専用の採苗器を海に吊るすのですが、その吊した中に入っている場所によっても全然生存率が違ったといったことがありまして、毎年試行錯誤を繰り返しました。
そして、3年くらい前から、ホタテのカゴを使った特殊な方法を用いて行った結果、1年で2センチメートルのナマコを50万個できるくらいにまで自分たちの技術が発達しました。去年くらいには更に80万個を超えるような生存率にもなってます。「この技術を是非見たい」ということで、全国各地から視察に来るという状況になっております。私たちは独自の種苗生産技術が上がったので、今後資源を枯渇させないような活動に取り組んでいきたいと考えております。

平成27年の名前が無い状態からの再生

この商品をつくって、頑張ろうという自分たちの熱い想いだと思います。この4年間は、勢いで駆け抜けた4年間だったと思います。全国青年・女性漁業者交流大会で、農水大臣賞もいただきました。とにかく、檜山海参に関しては毎年話題がありました。漁業者が初めて漁獲から加工、販売まで行った商品ということで注目を集めたものですから、その話題にも負けないように「自分たちがしっかり活動したい」という熱い思いがあったのではないかなと私は思っています。

GIについて

GIを受けようと思ったきっかけ

ナマコというのはですね、どこで獲れてどう加工されたものかというのが非常に分かりにくいです。販売されている乾燥ナマコのほとんどが北海道産です。私たちのナマコは非常に高値で取り引きされておりますが、結局は、高値で取り引きされたにも関わらず、じゃあ自分たちの檜山産というナマコはどこへ行っているんだろうというふうになったわけですね。ところがどうも、せっかくここで高い値段で水揚げされたとしても、結局は檜山産とは名乗られていませんでした。私たちは檜山で獲れたナマコだけを使った商品を作っているわけですから、今度は商標登録を真似されてしまう可能性もありますし、私たちが商標登録をする前に他のところが先に申請してしまうとそちらが有利になってしまうという情報もありました。そこで、商品を守るために自分たちで訴訟を提起するのは大変ですから、そこは国の方にしっかり守ってもらいたいと考えました。GIはまさにそういう制度だったものですから、自分たちの商品はGIに向いてるなと思った事がきっかけです。

GI取得するにあたり苦労したこと

本当に苦労しました。申請してから1年半掛かってやっと取れているものですから、公示になるまでにも1年2、3ヶ月掛かってます。経験のある事なら私たちも応用が効いたんですよね。ですが、私たちは漁業者で、書類の整理といったようなことは全然やったことがありませんでした。色々な方にもご協力いただきましたが、結局はその辺が一番苦労しました。申請書類などを作ってはいくのですが、8割がた出来ても、また最初の段階に戻ってしまうということが多々ありました。電話やメールのやりとりよりも、実際に農水省の方へ行って、しっかり話を聞きましょうということで、登録を受けるまでに4回くらい、北海道から東京まで行って、色々しっかり話を聞いて漏れのないように頑張りました。それが一番大変でしたね。
途中で折れそうになりましたが、今実際に商品にGIシールが貼られているところを見ると、やってよかったなと思います。

偽造品防止への取り組み

GIシールが一番のトレーサビリティということにはなるのですが、まずは商標登録をしっかりしています。中国でも商標登録は行っています。自分たちの活動になるのですが、ネットで模倣品が出ていないかというチェックを行っております。自分たちが作った商品の数量は非常に少ないにも関わらず、過剰に「檜山産ナマコ大量入荷」といった情報が出ていた場合に、そのような情報を集めるようにしています。今できる事はその程度ですが、今後は、商品の説明について、GIの説明をしっかり行って「こういうマークが付いているものが檜山海参と認められているものですよ」というふうに伝えていきたいと思っております。

テクノロジーについて

特殊な技術を使ったステッカー類を活用できれば非常に大きな武器になるのではないかと思っていまして、色々と考えてはいるのですが、なかなか情報が入っては来ません。ですが、現在使用しているシール等ですと簡単に真似られてしまうということもありますから、専用のチップでも使えるような管理の仕方ができれば最適だなと思っています。

意気込みやメッセージ

今後の意気込み

古い工場に「目指せ世界一」という看板を掲げています。元々そういう想いはあったのですが、工場を見たときに何か自分たちの工場には足りないな、何か寂しいなと感じたわけです。自分たちの目標って何だろうな、と考えたときに、檜山海参は日本で一番高値で取り引きされているナマコなんですね。日本で一番高いということは、もしかしたら世界一のナマコなのでないかと思ったんです。
そこで、私たちの目標は、3500人しかいない小さな町からでも世界一のものを出せるという想いを掲げて、「目指せ世界一」という看板を掲げました。
綺麗な状態に仕上がらないこともありましたが、「なぜだったのかな」ということをよく考えて、その都度試行錯誤を繰り返した結果、8割以上のA級品を作れるようにまでなりました。今後は、自分一人だけではやっていけませんので、若い人たちに技術を伝えてずっと続けていけるような組織にしたいと思っております。

若い人へ向けてのメッセージ

私は、このナマコに出会って人生変わった気がします。スーツを着てこういう場に現れるなんて思いもしてませんでした。しかし、こういう姿勢を見せるのも大切かなと思っています。というのは、若い人たちに「仕事ができるというのはかっこいいんだ」というのを見せることも大事なんじゃないかなって思うこともあるんですよ。ですから、そういった意味で、商品を作るだけでなく、こういった活動をすることも大事ですよ、ということも伝えていくことができればいいかなと考えています。
皆も頑張れば世界一の商品を作れるんだということですね、そして「これでいいんだ」とか思わない、妥協しない、ブレない気持ちで商品を作って頂きたい。是非私たちの加工部に飛び込んで来てください。

先人から紡がれ、世界一へ(GIインタビューの終わりに)

日本食としてはあまり馴染みのないナマコですが、日本には世界一を目指すナマコが存在しました。そして、その実現に向けて真っ直ぐ突き進むひやま漁業協同組合様の活動や檜山海参の魅力について、存分に語って頂きました。
檜山海参の再生そして世界一を目指す、ひやま漁業協同組合の「妥協しない」姿の根本には、先人から紡がれてきた道具そして想いがありました。

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