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Joel Robuchon(ジョエル・ロブション)氏が最後に愛した「八女伝統本玉露」<GIインタビュー>

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世界で最もミシュランの星を受賞した最高のシェフJoel Robuchon(ジョエル・ロブション)氏。「ロブション」という名前を一度は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。そんな世界最高のシェフであるロブション氏が生前最後に愛したもの、それはなんと日本茶。八女茶の中でも特に質が高く、GIにも登録されている「八女伝統本玉露」です。今回は、「八女伝統本玉露」に携わっている八女伝統本玉露推進協議会 会長 江島 一信 様、八女市 建設経済部 農業振興課 農産園芸係 椎窓 孝雄 様に取材させて頂きました。

 
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八女伝統本玉露の特徴

椎窓様
海外の方の認識は、日本茶は生臭いということです。それから、渋みというのが一番苦手でして、料理界の中でも渋みというのはダメなんですね。そういった渋みのあるものでは世界に通用しないな、ということで、随分前から苦みのないもの、生っぽくないものということを作るよう取り組んでおりました。特に八女伝統本玉露はそういった雑味を全て取り除いておりますので、ニューヨークイベント発表会で飲まれた海外の方からは、日本茶や中国茶のカテゴリとは全く違っている、別格過ぎて、素晴らしいという評価を頂きました。
ロブション氏に香港で会って頂いた時も、日本茶が嫌いなロブション氏が驚いたんですね。香港のロブション氏のお店とかでは中国茶もものすごく高いものも出されていますが、「それとも比較にならないし、緑茶のカテゴリではない」と。

こだわりと生産環境

徹底した旨味と甘みの追求

椎窓様
うま味と甘みを追求する、雑味を一切含まない、雑味の原因となる作り方を一切排除します。新芽は5枚伸びるのですが、一番伸びようとする上の部分に養分を蓄積しますので、1番目と2番目しか使いません。こだわっている部分を挙げだしたらキリがないですが、摘む際も5センチに揃えて、製造する時に5センチが同じ状態で揉んでいって乾燥します。
生産者の技術も大切です。新芽が伸びていく中で、遮光の具合を変えていかなければなりません。これを間違えると、芽が止まって枯れてしまったり、被覆の具合が薄かったら伸びてしまったりして、クオリティが上がりません。ギリギリのところを生産者の方は攻めていますが、そうしないと日本一は狙えません。

天然素材による被覆

椎窓様
ただ単に被覆をすれば化学繊維でもいいんじゃないかという産地があります。ただ、違うんですよね。天然素材にする理由としましては、茶畑内の気温が低くなります。そして、新芽がゆっくりゆっくり伸びていく際に養分を備えていき、葉っぱが柔らかくなって、繊維量も少なくなってきます。それから、雨が降ればその藁が湿度を吸収し、天気が続けば藁の水分を放出するということで、気温と湿度を最適に保つことができます。藁を確保するのが大変難しいんですよね。ただ、そこにこだわりがあるからこそ、20年連続全国茶品評会で産地賞日本1位を頂いた上、今年は1位から約30位くらいまで八女が独占しています。その最大の理由は、そのスタンスの違いではないかなと思います。

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自然仕立

椎窓様
クオリティだけを考えました。お茶の木そのものを自然の状態で伸ばしていくと、目ひとつひとつに養分が行き渡りますので、自然仕立にします。ただ、自然仕立にしますと、バリカンで刈ることは当然出来ませんので、手で摘まなくてはなりません。ただ、手で摘む利点は、バリカンでカットした際の切り口の酸化を防ぎます。やはり、手で丁寧に摘むということが、苦み、渋み、雑味を含まないという利点もございます。

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生産環境

江島様
中山間地域は一日の日照時間も短くなりますよね。山陰に隠れて、日の当たる時間が短くなる。すると、朝夕の気温差により朝霧が出ます。お茶の中でも、八女伝統本玉露の生産環境に適したところは限られてくるのかなと思います。八女市の中山間地というのは土壌条件や気象条件、日照条件、色々含めて、八女伝統本玉露の生産に最適な場所であることは間違いないです。

GIについて

GI登録のきっかけ

江島様
八女伝統本玉露自体が生産量も少なくなってきまして、希少価値というか、いろんな意味で守っていくというのが今の一番の課題だと思います。守るという事は生産者が意欲をもって玉露を作ってくれるということなんですけれども、そこにはどうしても収益性ですとか、そういうものが当然絡んできます。なので、これは農家も企業も一緒だと思いますけれども、儲かる経営をするという部分が、今一番大切だと思います。
GIを取得することが、一つの起爆剤的な効果もあるのかなと期待していたのですけれども、なかなか消費と結びついていないというのが今の実態かなと思います。

椎窓様
実は、八女茶は全国のお茶の生産量の2%くらいしかありません。どうしても、お茶の業界っていうと宇治とか静岡というものの方がブランドとして認識されています。他の産地は、トレースの問題ですとか、産地表示の問題ですとかでGIの取るのが難しいだろうという情報を得ていました。
そこで、これらを跳び越すときに、やはり第一弾として、八女茶がGIを取るという風に考えました。農林水産省の方々も探り探りで、モデルがないものですから、私どもも農林水産省の方と協議をしながら(進める)ということだったので、物凄い時間も掛かりましたし、管理体制というものも、深く追求しすぎて逆に複雑化してしまったという思いはあります。

GI登録後の変化

椎窓様
どこの産地もそうなんでしょうけど、元々GIそのものの認知度が消費者に全くございません。ただ単に、パッケージにGIシールを張り付けたら500円高く売れるのかというと、そういうことは無いということは分かっていたのですが、直接的な効果というのはあまり見られていないという状況です。
やはり、「説明しなくてはならない」というのは、商品の武器にはならないといいますか、消費者が求めていないものを「これはGI登録産品でして」みたいな感じで説明しても向こうは求めてないので。

競争心が必要

江島様
私たちは、生産したものを茶市場、お茶を販売するところに上場(出荷をして入札にかかる)します。そこで、茶商さんが物品に対しての値段を入れていきます。ですから、GIというマークに対して茶商さんが理解した考えを持っていないと、そこの市場での価格反映につながらないということですね。
お茶屋さんも色々と温度差がありますから、そこを一つのセールスとして頑張っていこうというお茶屋さんもありますし、「そんなのはあまり関係ない」と言うお茶屋さんもいるわけですよ。ですから、そこに競争心とかが芽生えると、市場での価格反映にも繋がるのかなと思います。

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八女伝統本玉露の普及への取り組み

ブランディング戦略

椎窓様
GI登録を受けて、関係者もお茶で唯一GIマークが付いたら世の中が変わると思っていたと思うのですが、なかなかそうはいかないということで、国の事業を活用して改めてブランディングをやり直そうという活動をしております。
今の販売単価ですと、非常に厳しい状況になっておりますので、八女茶は全国茶品評会でずっと20年連続日本一も含めて品質で勝負しておりますのでそこのところをもっと切っ先になるように、ブランディングを改めてやろうということを国内外で進めているところであります。
日本茶の中で競争をやっていると、どうしても宇治の方が200年の歴史があったりするので、八女茶はずっと宇治の次という認識を持たれてしまいます。これを追い越すためには何をやるかというと、やはり革新的なことをやらなければいけないということです。中国茶の方も1kg100万円や200万円というものはザラにございます。中国茶はブランディングをやってきたからこそ、そういった価値が世の中に認められています。日本茶はやってないんですよね。「100g1000円で売れたらいいんじゃないか」で終わっているものですから。中国茶にも私たちは負けていないという自負があります。
そして、ブランディングは、一歩一歩階段を上っていくようなもので、ぴょんと飛んでいくことは出来ないので、色んな方の支援があればあるほど階段を上っていけると思いますので、皆様のご支援をどうかよろしくお願いしたいと思います。

課題

椎窓様
全国的に言うと、1kgあたりの市場単価って、均すと大体2,000円くらいなんですね。八女伝統本玉露というのは、手で摘んだり藁で覆ったりですとか手間暇が掛かりますので、そのような価格で販売することはできません。GI取得する前は平均単価が1万円前後だったんですけれども、GIシールを貼るものはクオリティの担保がないといけないということは、お茶屋さんも含めて思っていらっしゃいました。八女伝統本玉露といってもピンからキリまでございます。市場単価が1万3千円以上のものにしかGIシールを貼ってはならないというルールになっておりますので、当初はお茶屋さんたちも頑張られて、入札して頂いたんですけれども、やはり出口のところ、消費者が買う部分が何も改善されないままお茶屋さんがそういうことをされたので、お茶屋さんの仕入原価が高くなっただけの話になってしまいました。お茶屋さんも「困ったな」と思い始めたということで、やはり最後の末端消費をどうするのかということを考えております。

富裕層がターゲット

椎窓様
高品質であっても茶葉での販売だけでは、消費者からは「高い」と言われてしまい、なかなか売れません。なので、そこから脱却しようという思いがあります。高級レストランでアルコールを飲まなくなってきた富裕層が増えています。体が資本なものですから、本物のセレブはお酒を飲まなくなってきたということで、レストラン関係が困っています。レストラン関係は、ワインで利益を出すところがございますので、それがペリエ(天然炭酸水ブランド)では困ってしまいます。そこで、ワインに代わるノンアルコールとして、八女茶が入れないかと考えております。1杯1000円とか2000円とか、ちゃんとワインと同じような価格で飲んでいただくと、そういったことが出来ないかということを模索しております。

価値のあるものを、価値のある値段で

江島様
国も、そういう制度(GI)で物産や特産を見出したいという企画で、花火を打ち上げたところまでは凄く良かったと思うのですが、そのあとですよね。いずれにしてもGIは高級品ですから、全ての方がGI産品を買えるわけではないので、消費する消費者を絞り込んで、絞り込みとかそういう戦略の中で、国がそこまで面倒見てくれればいいんでしょうけど、御社みたいなそういうことに対してどんどんセールスをして頂けるというのは凄くありがたいことだと思います。
私たちは作るのが仕事で、物を動かすということは専門分野ではございませんので、ただやはり、価値のあるものを価値のある値段で、価値の部分をどういうふうな形で消費者の方に伝えられるのかということを、重点を置いてもらってPRして頂ければと思います。

海外への展開

椎窓様
アメリカなどで日本茶などが健康志向でブームだとか抹茶ブームだとか国内では言われています。しかし、私たちが実際に行って気づいたのは、まだまだそういう時代になっていないということです。日本茶は少し特殊なものとしての扱いがなされています。現実、八女茶と言いましても砂糖を沢山入れた飲み物が主流でした。また、抹茶ブームと言われましても、4年前に行った時には全然そんなことはありませんでした。今年2月に行ったときは、ようやく抹茶が巷で飲まれるようになってきたかなーといったくらいです。ですから、日本茶の最高級だといっても、日本茶そのものの認知がまだまだされていないので、非常にハードルが高いなと思ったのが現実です。

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八女伝統本玉露×テクノロジー

椎窓様
まだまだIoT活用はスタートしたばかりなのですが、なぜスタートしたのかというと、数値化できない経験だったりが優先されていて、匠の技で継承してきました。しかし、匠の技で継承していると、今後継承者にちゃんと引き継いでいけるのかという不安がございます。それと、気づきもありました。栽培マニュアルには「このようにしなさい」という内容があるのですが、実際現場で気象であったり土壌であったりのデータを採っていくと、日本一を取っている生産者の方々のデータはちょっと違うなという気づきもあり、そういったところのデータ化ができたのかなと思います。
ただ、そういったデータが玉露生産者すべてにリアルタイムで分かるような仕組み、データを集約すると「今こうだから遮光率何パーセントにしてください。」というような指示が出る仕組みができたらなと思います。

椎窓様とロブション氏と八女茶

椎窓様とロブション氏との出会い

ロブション氏にお会いする一週間前に、ロブション氏は日本茶が嫌いであると聞きました。飛行機にのる前まで徹夜して納得できるようなものをセレクトして持っていきました。ロブション氏が飲んだものと全く同じものを、現在「八女伝統本玉露 – Superlative」として販売しております。
お会いして、自分が喋ろうとすると、「待て、お前の所作を見せろ、自分は味わいたい。お前は喋るな、分かる」と。やっぱりロブション氏はその裏に隠された想いや技術力というものが見透かされているのだな、と感じました。

こだわり抜いたからこそ認められた本物<GIインタビューの終わりに>

八女伝統本玉露を始めとする八女茶の生産への強いこだわりを感じました。そして、強いこだわりをもって、妥協しないからこそロブション氏に認められたのだと思います。強いこだわりをもって生産されている八女茶、そしてGI登録産品である八女伝統本玉露、一度皆様も「本物」を体験してみてはいかがでしょうか。

 
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